これまでは賃貸住宅を借りる際、親族などに連帯保証人を頼むことが一般的でしたが、最近は民法改正などの影響で、賃貸保証会社を利用することを必須条件としている物件が増加傾向にあります。
賃貸保証会社とはどのような存在で、どんな役割を果たすのか、また利用することでどの様なメリット・デメリットがあるのでしょうか。
賃貸保証会社とは
入居者が何らかの事情で家賃が払えなくなった際に、代わって家賃を支払うのが賃貸保証会社です。
万が一滞納などが発生しても保証会社が立替てくれるので、大家にとっては家賃やその他費用の取り漏れを心配する必要が無くなります。
全国の賃貸物件全体の滞納率の平均は5.0%で、首都圏で4.1%、関西圏は8.2%となっています。
20件に1件家賃などが入ってこないことは大家にとっては大きなマイナスですし、設備の修繕費など、大家はその物件を維持するだけでも多額の資金が必要になりますので、こうした家賃の取り漏れは賃貸物件を維持管理する上で深刻な問題にもなりかねないのです。
そこで賃貸契約を結ぶ際、親や親族などに保証人となってもらうことがこれまでは一般的だったのですが、連帯保証人は誰もがなれる訳ではなく、親族では要件を満せなかったり周囲の人に保証人を頼みにくいといった場合などに賃貸保証会社が利用されます。
こうして最近の賃貸物件では連帯保証人ではなく賃貸保証会社を利用することを義務付けるケースが一般的となってきました。
保証人より保証会社が主流に
国土交通省住宅局が発表した「家賃債務保証の現状」によると、2010年から2014年にかけての5年間で、賃貸借契約において家賃債務保証会社の利用を求める割合は39%から56%に増加しています。
さらに2020年度の家賃債務保証会社の利用率は約8割にまで上昇していることも発表されており、2010年からの10年程で家賃保証会社の利用が倍増しています。
この理由は以下の通りです。
- 核家族化などの影響で人間関係が希薄化し連帯保証人を頼めない
- 連帯保証人に関する民法が改正された
- 高齢化により高齢者単身世帯が増加している
- 大家側にリスクを回避する志向が高まっている
このうち2020年4月に施行された民法改正の改正の影響は特に大きい要因です。
この法改正は、個人が保証人になる契約における支払い金額の上限額を定めることが決まり、高額な保証金額が提示された賃貸契約では連帯保証人を頼むこと自体が難しくなり、さらに極度額を超えた部分の債務は連帯保証人に請求できず、大家の負担になります。
結果として賃貸契約をためらう人が増加し、空室リスクが高まる上に大家側の負担も大きくなるとあって、新たなリスクとなりました。
そうしたリスクに備えるため、家賃保証会社の利用が増えたと考えられますし、今後は家賃保証会社を利用することが当たり前の世の中になるでしょう。
賃貸保証会社を利用する場合
物件契約時に保証会社の利用を求められた場合、必ず利用しなければなりませんが、それにプラスして連帯保証人が必要になる物件も存在します。家賃保証会社の利用と連帯保証人を立てることの両方を必須としている場合がある点には注意しましょう。
また連帯保証人を立てるか家賃保証会社を利用するかを選べる物件もありますので、その場合入居者が連帯保証人ではなく家賃保証会社を選んだ場合、契約者の意思で保証会社を利用することになります。
入居者は家賃に応じた保証料を保証会社に支払いますが、支払額は保証会社によって異なり、家賃保証料の目安は契約初年度で家賃の0.5~1カ月分、2年目以降で年1~2万円の程の金額が一般的です。
こうした保証会社は複数社存在しますが、入居者が保証会社を選ぶことはほぼ無く、大家や不動産会社が指定している会社を選ぶことが一般的な流れとなります。
賃貸保証会社が保証する内容
家賃保証会社のプランによっても違いがありますが、保証される主な内容は 以下の通りです。
- 滞納された毎月の家賃や管理費、共益費、駐車場代など
- 入居者が支払わなかった更新料や原状回復費用など
- 入居中に発生し支払われなかった違約金や損害金
- 家賃等の未払いや物件の明け渡しなどで裁判になった場合の費用
賃貸保証会社を利用するメリットとデメリット
保証会社を利用することによる入居者のメリット・デメリットはどの様なものがあるでしょうか。
賃貸保証会社を利用するメリット
保証会社は保証料を支払うことで連帯保証人の代わりになる存在で、連帯保証人を立てられない人や、収入が安定していない人でも部屋を借りることを可能にします。
部屋を借りる際に連帯保証人のみが選択肢であった場合、親族以外で支払いリスクのある連帯保証人の役割を引き受けてくれる人を探すのは難しく、借りることのできる部屋を見つけることは事実上不可能です。
また仮に親族が保証人になってくれると申し出たとしても、その親族が既に仕事を退職していたり、持ち家でなかったり収入が非常に低いなどの場合では保証人として認められないケースもあり得ます。
そうした問題を解決してくれるのが保証会社なのです。
賃貸保証会社を利用するデメリット
保証会社を利用するデメリットは保証料の支払い義務が生じる点です。
賃貸物件を借りる時点で保証料を支払い、定期的に更新料も徴収されるのでそれらを全て合計するとかなりの金額になります。
また保証料を支払っているから家賃を滞納しても保証会社が支払ってくれるという訳ではなく、保証会社は滞納した賃貸を立替ているにすぎません。
後に立替金の支払いを請求され、場合によっては信用情報に傷が付いたり訴訟トラブルに発展する可能性もあります。もちろん滞納をしたくてしている入居者は居ないと思われますが、保証会社に加入することで家賃の支払い義務が免除されるという仕組みではないのです。
そうした点を考えると、入居者にとって保証会社を利用して賃貸物件を契約することは、信用を得ることで物件を借りやすくするという以外、特に金銭面でのメリットは少ないと言わざるを得ません。
賃貸保証会社の審査項目
この様に保証会社を利用する際にはメリット・デメリットが有りますが、ほぼ保証会社と契約せざるを得ない現在の状況では、賃貸契約を結べるか=保証会社の審査を通過できるかであると言っても過言ではありません。
保証会社を利用するには審査を受け、これに通過する必要があります。
審査の種類
まず行われるのが書類上での審査になりますが、保証会社が用意した書類に必要事項を記入し提出する際に併せて必要になる書類が必要となります。
- 賃貸保証会社用申込書
- 身分証明書の表裏コピー(運転免許証、健康保険証)
- 収入証明関連(源泉徴収票や給与明細書など)
- 在籍証明書
これら提出した申込書・必要書類に基づいて審査が行われ、主なチェックポイントとしては現在の職種や雇用形態、勤続年数や年収、年齢、過去に滞納履歴が無いかなどです。
そもそも契約しようとしている人物が身分を偽っていたり、収入や雇用形態が安定していなければ賃貸契約もできませんのでこうした点をまずは確認します。
チェックポイントの中で最も厳しい判断を下されるのが過去の家賃滞納歴です。もし過去に家賃滞納歴がある場合、その情報は家賃保証会社間で共有されている場合が有りますので、この時点で審査が通らないということも十分にあり得るのです。
職業で言うと、一般的には公務員・正社員の場合、審査が通過しやすい傾向にあります。
物件賃料に応じた審査
次に行われるのが物件の賃料に応じた審査です。具体的には、契約者に家賃の支払い能力があるかどうかを、年収に対する家賃の比率で確かめますが、一般的な基準としては、家賃が月収の1/3以内であれば審査に通る可能性は高くなる傾向にあります。
賃料が高い物件は、当然ですが滞納時の金額も高くなりがちです。そのため仮に月収の1/3以内の物件であったとしても高額賃貸物件の場合は審査が厳しくなります。
審査にかかる日数
審査にかかる日数としては早い場合は翌日には結果が出ますが、一般的には3~7日程度必要です。
書類を提出し審査期間に入れば賃貸契約者ができることは特にありませんが、本人確認のために入居希望者へ賃貸保証会社から電話がかかってくる場合が有りますので、審査期間中は常に電話に出られるようにしておくか、着信履歴をチェックし着信に気付いたらすぐに折り返す様心がけましょう。
もしも家賃を滞納してしまったら
家賃を滞納してしまい、実際に保証会社に家賃を立替てもらうことになった場合、その後はどうなるのでしょうか。
賃貸保証会社の利用時に家賃を滞納したら
仮に1か月分だけでも家賃を滞納してしまうと、契約した保証会社によっては即支払い督促が行われ、数ヵ月滞納すると契約解除となります。
すぐに部屋の明け渡しを求められることがありますので支払いの遅れが発生しない様に気を付けましょう。
また滞納履歴はデータとして残り保証会社間で共有される場合もあるので、過去に滞納履歴があると、その後契約しようとしている物件の保証会社が別の会社であっても審査に通りにくくなります。
まとめ
家賃保証会社は入居者にとっては賃貸契約をする上で必須の存在であり、大家側としては家賃の支払いを保証してくれることで安心感を得ることができます。
契約する段階で滞納することを考えている方はまずいないでしょうが、将来どのような事が起こるかは誰にもわかりません。
自分自身が思いもよらぬ事態に巻き込まれ、結果として家賃を支払うことが困難になるかもしれませんので、そういった万が一の事態に備えてくれる家賃保証会社は大変ありがたい存在と言えるでしょう。
賃貸契約を結ぶ際は、一見すると余分な費用が掛かる点を嫌われがちな保証会社ですが、適切に利用し、より良い物件を探すために必要不可欠な存在です。
コメント