人生でそう何度も経験する事のない引越し。しかし若い時には誰でも何度も引越しをする機会があるかと思います。
転勤や遠方の大学が決まった時、そして就職時にも引越しをする方は多いかと思います。
自分の車やレンタカーを使って、自分や友達と引越し作業を行う方もおられるでしょうが、最近は引越し業者に頼んでも比較的安く引越し作業を行ってくれるので、業者に任せる方も多いかと思います。
基本的に引越しは業者に任せる事をおススメしますが、例えプロでもたまにはミスをする事もあります。
あなたの大切な荷物や、新居の壁や柱を傷つけられたり壊されたりした経験はありませんか?
引越しで家電製品を壊されたけど補償してもらえなかった。
新居の壁を傷つけられたけど、弁償されなかった。
ほとんどの業者は補償をしてくれるのですが、弁償してもらえず泣き寝入りした経験があるという方も多々おられます。
悪意を持って業者側が逃げている場合もありますが、実は「標準引越運送約款」という国が定めた法律で補償しなくても良い場合があるという事は皆さんご存じないかと思います。
なぜ壊されたり傷を付けられたのに補償されないの?
もしあなたが、業者側の落ち度で物を壊された場合、この様に疑問を感じるかと思います。
今回は、これから引っ越しを控えている方でこの様なトラブルに巻き込まれない為にも「標準引越運送約款」を学びましょう。
最後まで読んでトラブルの内容に備えましょう。
標準引越運送約款ってなに?
そもそも標準引越運送約款というものを知らない方がほとんどかと思います。まずはそこから学んでいきましょう。
標準引越運送約款は国土交通省が定めたルール
この標準引越運送約款というものは、消費者側と業者側がトラブルになるのを防ぐ為に作られた約款(ルール)になります。
例えば引越し作業が完了して数日後、荷解き作業をしているとあなたの大切な物が壊れていた場合。業者のトラックが渋滞で新居に到着が遅れてしまい、あなたに何らかの不利益が生じた場合。この様な場合に細かく「どちらに非があってどちら側に弁済する義務が生じるか」などを細かく定めたルールなのです。
壊れた、壊れてないなどの水掛け論になったりするのを避けるためにも、これから引っ越しを控えている方はこの「標準引越運送約款」をよく読んで理解する事が必要なのです。
壊れた荷物は弁償しなくても良いと標準引越運送約款に書いているのは本当?
この標準引越運送約款で「破損しても弁償する義務はない」場合があります。たとえ業者側があなたの荷物を乱雑に扱い、それが原因で壊れてしまった場合でも法律で守られてしまうケースがあります。
利用者からしたらたまりませんよね。安心安全の為に業者に依頼をしたのにも拘らずその業者に荷物を壊されてしまい、さらに弁償もしてもらえないとなると、何の為に業者に依頼したか分からなくなります。
しかし標準引越運送約款で守られる場合があるのです。標準引越運送約款で「破損しても弁済しなくても良い」と記載されているのは次のケースになります。
- 消費者側が梱包した場合の段ボールの中身
- 引越し後3カ月以降に破損を発見した場合
- 長年使用している家電など
- 火災や事故など業者側に過失が生じない場合
お客様が梱包をした場合の段ボールの中身は弁償されない場合が多い
一番トラブルになるケースが多いのが「業者が梱包をしていない、段ボールの中身が破損した時」です。
例えば食器などをあなたがダンボールに梱包したとします。引越し作業が完了して荷解きをした際に、食器が割れているのを発見した場合どうなるのでしょうか。
業者側が明らかにダンボールを落とすなどの過失がない場合、このケースは弁償されません。
業者が運ぶ際に割っていると思うんだけどなぜ弁償してもらえないの?
きっとあなたはこう思う事でしょう。しかし、あなたが梱包をした段ボールの中身は破損の因果関係を立証するのが難しい為、業者側に弁済義務が生じないのです。
第九章 責任
引用:標準引越運送約款
(責任と挙証等)
第二十二条 当店は、荷物の受取(荷造りを含む。)から引渡し(開梱を含む。)までの間にその荷物その他のものが滅失し若しくは損傷し、若しくはその滅失若しくは損傷の原因が生じ、又は荷物が遅延したときは、これによ
って生じた損害を賠償する責任を負います。ただし、当店が、自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の荷造り、開梱、受取、引渡し、保管及び運送について注意を怠らなかったことを証明したときは、この限り
ではありません
しかし、割れ物や壊れやすいものを事前に業者側に告知する事により、あなたに過失が無くなる場合があります。段ボールに「ワレモノ」や「食器」などを記載し、
この中身は食器なので割れやすいです。注意をお願い致します。
この様に伝える事でトラブルを防ぐことが可能です。この状態で荷物が破損していた場合は、弁済される確率が高くなります。
この様なケースは多々あるため、梱包作業の際は十分な注意が必要です。引越しのプランによっては業者側が梱包もしてくれる場合があります。この場合の破損は業者側に弁済義務が生じますので覚えておきましょう。
火災や事故などで荷物が破損した場合
火災や事故などの予見できない場合の荷物の破損も、業者側に弁済義務は生じません。
第二十三条
五 予見できない異常な交通障害
引用:標準引越運送約款
六 地震、津波、洪水、暴風雨、地すべり、山崩れその他の天災
業者側が事故を起こした場合は弁償されますが、荷物が原因で火災になった場合やあなたの車が業者の車に追突した場合などは、あなたが業者側に弁済しなければなりません。
また、第三者が業者に事故を起こした場合は第三者に弁償義務が生じます。第三者の任意保険などで弁償してもらいましょう。もし第三者が任意保険に加入していない場合は泣き寝入りになってしまいますので、要注意です。
荷物が破損した場合は減価償却として計算される
あなたの大切な家具や家電、高価な荷物が業者側の過失で破損した場合には弁償してもらう事ができます。
しかし購入金額全額が返ってくることはありません。例えば使用年数5年、購入金額が20万円だったテレビの液晶が割れたとしましょう。たとえ業者側の過失だったとしても、20万円全額が補償されるわけではありません。
詳しい計算法や減価償却額は、加入している保険会社によって異なりますので詳細はわかりかねますが、10~15万円程が返ってくる金額になると思って頂いて大丈夫です。
家具や家電などは減価償却額として差し引いた金額で弁済されますが、美術品や骨とう品などの価値が判断しにくいものは対象外となります。
この美術品は祖父から受け継いだもので100万円は絶対にする!
この様な主張をしても確実に通らないので、大切な物は自分で運搬するようにしましょう。
全ての引越し業者は賠償保険に加入している
ごく一部の個人業者以外、ほとんどの引越し業者は保険に加入しています。
運送業者貨物賠償責任保険や請負業者賠償責任保険がこれに該当します。業者によってどの保険に加入しているのかは様々ですが、恐らくほとんどの業者は運送業者貨物賠償責任保険に加入しています。
保険には加入していますか?
万が一の破損などの場合は補償して頂けますか?
引越し業者に引越しを依頼する際は、まずこの様に確認をしてください。
引越しをする時は引越荷物運送保険に加入しよう
利用者側が加入する「引越荷物運送保険」というものもあります。これは個人で加入するのではなく、引越し業者から提示されます。
1000~3000円の追加料金で、利用者側の過失や事故などでの荷物も補償対象となります。万が一の事を考えて、多少の追加料金を払っても加入する事を推奨します。
引越し時の破損で補償されるものと補償されないもの
引越し時の破損で業者側に過失がある場合は弁償してもらえ、利用者側に過失がある場合や事故や天災などでは補償してもらえない場合が多いという事は理解して頂けたでしょうか?
標準引越運送約款では補償しなければならない場合と、補償しなくても良い場合が明記されています。それでは詳しく見ていきましょう。
引越し業者が補償しなければならない場合
引越し業者が補償しなければならない場合は以下の点です。
- 積み込み、荷下ろし中
- 梱包、開梱作業中
- 仮置き中
- 運搬中
天災・第三者が原因の事故・水漏れなどは引越し業者に責任はありませんが、加入している保険によっては補償される場合があります。引越し業者が対応できる保険や保証は確認するようにしましょう。
引越し業者が補償できない場合
引越し業者が補償できない物や場合は以下の通りです。
- 現金、手形、小切手、株券などの貨紙幣類
- 有価証券
- 貴金属、宝石類
- 生動物
- 商品及び営業用什器、備品
これらの物はどんな保険を適応しても補償できない物になります。
第二十四条 第四条第二項各号に掲げる荷物については、当店がその旨を知って引き受けた場合に限り、当店は、当該荷物の滅失、損傷又は遅延について、損害賠償の責任を負います。
貴重品、壊れやすいもの、変質又は腐敗しやすいもの等運送上の特段の注意を要する荷物(第四条第二項各号に掲
げるものを除く。)については、荷送人が第八条第一項の規定によるその有無の申告をせず、かつ、当店が過失なくしてその存在を知らなかった場合は、当店は、運送上の特段の注意を払わなかったことにより生じた当該荷物の滅失若しくは損傷又は当該荷物により生じた他の荷物の滅失、損傷若しくは遅延について、損害賠償の責任を負いません。
(責任の特別消滅事由)引用:標準引越運送約款
その他にも楽器やパソコンも対象外となります。
運んでもらったギターの音がおかしい!
パソコンのデータが飛んでしまったけど補償してもらえるの?
この様な問題も起こる可能性があります。しかし楽器の元の音や、パソコンのデータなどは立証するのも因果関係の有無も困難な為、補償外となってしまいます。
これらに該当するものは自身で運搬するか、最悪のケースも考えて業者に運んでもらうようにしましょう。
まとめ:引越し業者には保険加入の有無を確認して利用しよう
ごく一部の個人業者以外はどの引越し会社も保険には加入していますし、補償対象外の場合も弁償してくれる場合があります。
しかし今回解説した通り、補償の対象外となるものもあります。
補償してもらえなかった!おかしい!
もしあなたの大切な荷物や新居の破損があった際は、こう思うのは皆さん当然です。このようなトラブルを防ぐ為にも「標準引越運送約款」を利用者側が把握しておくことが大切です。
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