賃貸物件に入居する際、通常火災保険に加入しますが、補償範囲はどこまでか、保険料はリーズナブルかをあなたは確かめていますか?
何も確認せず、大家さんや不動産会社の営業マンに勧められた保険にサインしていませんか?
確認していないと万一火事や水漏れがあったとき、被害をカバーできないかもしれませんよ。
本記事では、賃貸物件で火災保険に加入すべき理由、火災保険の種類、加入時に注意すべき点について解説します。
賃貸物件で火災保険は必要?
賃貸物件入居にあたって火災保険の加入は任意ですが、ほとんどの人が加入します。
理由は次の2つです。
- 賃貸物件の原状回復義務
- 水漏れへの備え
任意とは言っても、ほとんどの賃貸物件は契約時に火災保険の加入が必須となります。それではこの2つの理由について詳しく解説していきましょう。
火災保険に加入すべき理由
①賃貸物件の原状回復義務
もし借主であるあなたが火事を起こしたとしても、あなたに重大な過失がなければ損害賠償をしなくてもかまいません。(失火責任法)
なぜなら火災を起こした人に重大な過失がない場合、損害賠償責任は発生しないと失火責任法は規定しているからです。
ということは、隣の人の起こした火災によりあなたが借りている賃貸住宅が焼けても隣人に重大な過失がなければ、あなたは隣人に損害賠償を請求できません。
この場合、あなたに原状回復義務が発生します。
なぜなら賃貸物件に入居したあとに水漏れや火災で損傷が発生した場合、退去するときに損傷を借りる前と同じ状態にして返さなくてはならないからです。(民法621条)
したがって賃貸物件に入居する際、火災保険の加入は事実上必須といっていいでしょう。
②水漏れへの備え
あなたが賃貸住宅で生活しているときに水漏れを発生させ階下の住民に損害を与えた場合、当然損害賠償を請求されるでしょう。
それに備えるために火災保険に加入する必要があります。
賃貸物件の火災保険の種類
賃貸物件で加入する火災保険は次の3つです。
- 家財保険
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家財保険
家財保険とは、家財に対してかける保険です。
家財とは、建物内に収容され被保険者が所有する生活用の動産のことです。
家財に含まれるもの
賃貸住宅のように建物と家財の所有者が異なる場合、次のいずれかに該当するもののうち、家財の所有者が所有するものは、保険の対象となる家財に含まれます。
- 畳、建具その他これらに類する物
- 電気、ガス、給排水、エアコン等の設備のうち建物に付加した物
- 浴槽、流し、ガス台、調理台その他これらに類する物のうち建物に付加した物
家財に含まれないもの
次のいずれかに該当するものは、保険の対象となる家財に含まれません、
- 自動車、自動二輪車 *総排気量125CC以下の原動機付自転車は家財に含まれます。
- 現金、有価証券、預貯金通帳・証書、キャッシュカード、印紙、切手類
- 動物、植物等の生物
- プログラム、データ
借家人賠償責任保険
借家人賠償責任保険とは、偶然の事故で賃貸物件に損害を与えた場合に大家さんに対しての損害賠償金を補償するための保険です。
①保険金が支払われる場合
火災、破裂・爆発、水ぬれにより賃貸物件が損壊し、借主であるあなたが大家さんに対し損害賠償責任を負ったとき
*水ぬれとは、給排水設備に生じた事故に伴う漏水・放水等による水ぬれを指します。
具体例
- ストーブの消し忘れで小火が発生し床や壁を焦がした場合
- 室内の洗濯機のホースがはずれ床が水びたしになりフローリングが汚損した場合など
②保険金が支払われない場合
具体例
- 部屋の模様替えをした際に壁紙を傷つけた場合
- 子どもがふざけて部屋の障子を破いた場合など
個人賠償責任保険
個人賠償責任保険とは、日常生活で偶然に他人に怪我をおわせたり、他人のものを壊して損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険です。
①保険金が支払われる場合
具体例
- 室内の洗濯機のホースがはずれ、下の部屋で水漏れにより階下の住人の服が汚れ損害賠償を請求された場合
②保険金が支払われない場合
具体例
- 大家さんから借りた電卓を誤って落とし、壊してしまった場合
- 被保険者が使用または管理する他人の財物は、補償の対象ではないからです
賃貸物件と地震保険
火災保険は地震の場合にも補償してもらえるの?
2011年の東日本大震災以来、「もしも」を考える方が多くなったかと思います。火災保険について詳しく知っていない方の為に、地震保険は火災保険に入っているのか、また地震に対しての保険について詳しく解説していきたいと思います。
賃貸契約時に地震保険は必要?
結論は、賃貸物件に入居する際に地震保険の加入は必須ではありません。
なぜなら地震保険は火災保険とは全く別のものであるからです。
地震保険とは?
地震保険とは、火災保険とセットでの加入が義務付けられている保険であり、火災保険で補償できない地震等による火災・損壊などによる損害を補償する保険です。
①居住用の建物
②生活用動産(家財)
居住用の建物である賃貸物件には大家さんが地震保険を付保しますから、借主であるあなたが地震保険に加入する場合は、家財に付保するだけでかまいません。
地震保険の加入方法
①火災保険に原則自動セット
原則として地震保険は火災保険に自動セットされるため火災保険契約を締結する際に保険契約者から「地震保険をセットしない」旨の申し出がない限り、地震保険をセットして加入することになります。
*火災保険が保険期間中で終了した場合は、地震保険契約も終了します。
②「地震保険ご確認欄」などによる意思確認
火災保険契約の際に地震保険をセットしない旨の申し出があった場合は、保険契約申込書の「地震保険ご確認欄」に保険契約者の署名もしくは押印をもらわねばなりません。
③保険金額の設定
建物、家財ごとに火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で定めます。
建物は5,000万円、家財は1,000万円です。
④保険期間
地震保険は火災保険とセットして加入する必要があるため、保険期間は火災保険の火災保険と一致させることになります。
最長期間は5年になります。
ただし保険期間終了後に契約を継続できます。
たとえば火災保険の保険期間が20年、地震保険の保険期間が5年とします。
すると、火災保険の保険期間中に地震保険の契約を3回継続できることになります。
賃貸物件の火災保険加入時に注意すべきポイント
注意すべきポイントは次の3つです。
- あなたが自由に火災保険を選んでよい
- 重複加入を避ける
- 家財保険・借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険にセットで加入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①火災保険は自分で選択する事ができる
賃貸物件を借りる場合、通常、不動産会社の営業マンから保険会社を勧めてくることが多いでしょう。
「営業マンが勧めてくるのだから、この保険に入らなければいけない」とあなたは思っていませんか。
しかし、必ずしも不動産会社が勧める火災保険に加入しなければならないということはありません。
勧められた保険の保険料が割高であったり、余分な補償が付保されているケースもあるからです。
あなたが保険内容を自分で調べ補償範囲・保険料などに納得できる保険に加入すればいいのです。
②重複加入を避ける
現在入居している賃貸物件から別の賃貸物件に引っ越す場合、火災保険を重複して加入することがよくあります。
火災保険は長期一括契約すると保険料が安くなるため、重複加入が発生してしまうのです。
たとえば現在あなたが入居している賃貸物件で、5年の火災保険に加入した際に5年分の保険料を一括で支払い1年で退去すれば、火災保険は4年分余ることになります。
あなたが退去する際に火災保険を解約することにより、4年分の火災保険料を解約返戻金として取り戻せるのです。
しかし解約しなければ現在の火災保険契約は継続したままで、引っ越した賃貸物件の火災保険に加入するという二重契約が発生してしまいます。日々の生活にまぎれ火災保険に加入したということをつい忘れがちですが、次の賃貸物件に引っ越す場合は不要となる火災保険を必ず解約しましょう。
③家財保険・借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険にセットで加入
通常、賃貸物件の火災保険はこの3つの保険をセットで加入することが一般的です。
家財保険の「水ぬれ」と個人賠償責任保険を混同することで、個人賠償責任保険に加入しないことがあります。
これを防ぐために3つセットで加入すべきでしょう。
家財保険の「水ぬれ」は他人によって自分の家財が被害を受けたときのための保険です。
これに対し個人賠償責任保険は、自分が他人に怪我を負わせたり他人のものを壊したことによる損害賠償請求に備えるための保険です。
この2つは全く別の保険です。
あなたの部屋から水漏れが発生し下階の住人から損害賠償請求された場合、個人賠償責任保険に加入していなければ対応できません。
まとめ
ここまで賃貸物件入居の際に火災保険に加入すべき理由、加入すべき保険の種類、補償範囲、保険金が支払われるケース、支払われないケースなどについて解説してきました。
おおむね内容を理解していただけたかと思います。
しかしながら、本記事の内容は賃貸物件の火災保険に関するごく一部でしかありません。
補償範囲、保険料、地震保険の付保など納得できる火災保険に加入するためには、あなたが調べ、専門家に相談することを強くお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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