アパートやマンションなどの賃貸住宅を借りたことがある方はご存知だと思いますが、退去のときには費用が発生します。
しかし、請求費用の相場観や原状回復費用などをどこまで自身が負担するのか、相場以上の払う必要のない金額を不正請求されていないかなど、不安に思っていたり疑問を抱いている人もいらっしゃるのではないでしょうか?
中には家賃相場の知識が無い方に不正請求を行い、利益を得ているなんて会社もいるという噂も・・・。
そんな企業に騙されないようにするため、また不安を解消するためにも、しっかりと退去費用の相場を理解しておくことで不正な請求金額を支払わずに適正価格に抑えることができるのです。
そこで今回は退去時に発生する費用の相場観や実際の原状回復費用は入居者と貸主のどちらが負担するのか、退去費用を抑えるためのポイントについて詳しくお話します。
退去費用の相場
相場よりも高額だった場合は自分で修理できそうな部分を直したり、金額の引き下げ交渉をしたりと、まずは対策を知りたいですよね。
では、実際にアパートやマンションなどを退去するときの相場はいくらぐらいなのでしょうか?
間取り別での退去費用の相場
賃貸住宅を借りたことがある方200名に「退去費用がいくら掛かったか」のアンケート調査をした結果、平均金額は6万3283円となっているようです。
これは部屋の数によって変動し、やはり部屋の数が多いほど費用が高くなるようです。
居住年数別での退去費用の相場
居住年数 | 退去費用請求の平均額 |
---|---|
3年未満 | 49,431円 |
4年~6年 | 61,694円 |
7年以上 | 87,090円 |
また、部屋数や間取りだけで変動するのではなく、居住年数によっても変わってきます。
やはり居住年数が長いほど退去費用が上がっているのです。
1平方メートルあたりの退去費用の相場
残念ながらアパートやマンションの退去費用は1平方メートル辺りの正しい金額を計算して出すことはできません。
そのため、実際に請求された退去費用とワンルーム、1LDKなどの平均的な間取り別の平米数から逆算してみたところ、平米数の広い部屋の方が割安になることが分かりました。
これまでの結果から、間取りや居住年数、平米数を自身の部屋で考慮することで、退去費用の目安金額が分かると思います。
しかし、時期や地域、部屋の状態によって金額の変動はあると思いますので、その点だけ注意してください。
アパートなどの賃貸に必要な「退去費用」とは?
ではそもそも「退去費用」とはどんなものに使われる費用なのでしょうか?
内訳として大きく分けると、「原状回復費用」と「ハウスクリーニング費用」になり、その他に例えば劣化や汚れの具合によって別途で費用が発生すると考えると分かりやすいと思います。
退去費用に含まれる「原状回復費用」とは?
「原状回復費用」とは、賃貸契約において借主が退去時には借りたときと同じ状態で返すという「原状回復義務」というものがあり、そのための修繕費用などに充てられます。
この費用は原状回復ガイドラインに定められている決まりに従い、回復する箇所の責任の所在が借主なのか、貸主なのかを判断するため、その内容によって費用負担が大きく変わるのです。
ちなみに国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、
”原状回復とは賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること”
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
と記されています。
先程もお伝えしたとおり、原状回復とは「借りたときと同じ状態で戻すこと」ですが、ガイドラインでの定義は借りたときの状態に戻すのではなく、通常使用の範囲を超える毀損や損傷の復旧のための費用であるということ。
つまり借りたときの状態に戻すのではなく、普通に生活していてできてしまった傷や汚れは原状回復に該当しないため、借主が支払う必要は無いと言えるでしょう。
原状回復の補修にかかる費用の相場
汚れを落としたり原状回復の補修とは「壁紙・ふすまの張替え」や「床材に付いた汚れの除去や張替え」「柱の修繕」「壁の下地ボードの取替えや張替え」など様々。
ですが、クリーニング費用と同様、金額の振れ幅が非常に大きいので、職人・業者の人件費と補修箇所によって金額が異なることを理解しておきましょう。
職人・業者の人件費によって費用が異なる
業者によって作業内容や進め方などが違うため補修・除去の費用が異なること、さらに職人を呼んで専門的な補修費用は時期などによって大きく変動します。
なぜかというと、職人さんは常に人材が不足しており、需要が高まる時期に依頼するとその分人件費が上乗せされるため、結果として補修費用が上がってしまうのです。
補修箇所によって金額が異なる
たとえば床材の張替えでも1部屋だけなのか全部屋なのかによっても金額は変動します。
というのも、床材の張替えは該当箇所のみ剥がせるわけではなく、部屋の端から床を剥がして該当箇所まで来たらその床を張り替えるといった手順。
それが少しの傷や汚れだったとしても複数の部屋に分かれていたり箇所によっては時間が掛かってしまうことから、その分の作業費や人件費が上がってしまうということです。
退去費用に含まれる「ハウスクリーニング代」とは?
専門業者による住宅の清掃サービスであるハウスクリーニングは、貸主が清掃を行うのではなく、専門業者に依頼することで発生する費用のことをいいます。
では、ハウスクリーニングで行うことの例として、
- 床の清掃、ワックス掛け
- エアコンの洗浄クリーニング
- キッチンやお風呂などの水回り清掃
- 汚れた壁紙の張替えや清掃
- ベランダ清掃
などが挙げられます。
この作業をどれをどこまで行うのかは貸主が判断したり契約内容によって異なります。
これらを全て行うことで費用負担は大きくなりますが、きちんと行うことで次の借主が決まりやすくなるため、貸主は築年数やすぐに入居者が欲しいのかどうかをハウスクリーニング代と見合わせながら決めなければなりません。
ハウスクリーニングにかかる費用の相場
相場観としては部屋の平米数によって1万5000円から5万円ほどですが、かなり広い部屋の場合は5万円以上になることも。
また、ハウスクリーニング代に関しても業者によって費用が異なること、そして時期によっても費用が異なりますので、注意が必要です。
業者によって費用が異なる
ハウスクリーニング業者は様々あり、その業者によって価格設定は異なります。
安くて良い業者があればもちろん良いのですが、安かろう悪かろうではハウスクリーニングを頼む意味があまりなくなってしまうので、作業が丁寧に行われるか、綺麗にできるのかといった質が重要といえるでしょう。
貸主の方で複数の物件を所有している場合、複数の業者への見積もりと可能であれば数社にお願いしてみて、業者の質を比較をしてみてください。
そうすることで費用対効果がより高い業者が見つかりますので、今後はその業者のみにお願いすると良いでしょう。
時期によって費用が異なる
ハウスクリーニングの依頼は一般的に進学や転勤、入社などによって退去が多い3月や9月が多いため、このときに需要が高まります。
そのため、この時期はクリーニング代が比較的高まる傾向にあるのです。
先程お伝えしたクリーニング代金はあくまで参考程度に考えておき、時期によって変動してしまうことは頭に入れておきましょう。
原状回復費用の負担は借主?貸主?
たとえ気を付けながら生活をしていたとしても、住んでいる上でどうしても傷や汚れが発生してしまったり、損傷をしてしまう可能性があります。
では、そのような場合は全て借主が費用負担しなければならないのでしょうか?
それは汚れや損傷具合によるため、その判断基準についてはこの後詳しくご説明していきます。
どちらが負担するかの判断基準
どちらが費用を負担するかは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によって次のように定まっています。
- 経年劣化や自然損傷の場合⇒大家(貸主)負担
- 借主の故意、過失による損傷や汚れ⇒借主負担
そう、自分以外の人がその家で普通に生活していたとしても発生してしまうような損傷や劣化に関しては貸主負担になる場合が多い、と覚えておくと良いでしょう。
借主が負担すべき費用は?
先程お伝えしたとおり、原状回復費用の負担は故意に損傷させたり汚したりしなければ借主の費用負担は不要です。
しかし、何点かは「通常使用」の定義が曖昧であるため、借主が負担しなければならないケースをお話ししていきます。
クロスの傷や落書き
たとえば、「子供が壁に落書きをしてしまった」などの汚れの場合は借主負担となります。
また、家具や大型の家電を運んでいるときに謝って壁にぶつけてしまい傷ができてしまったなど、借主の過失によってできた傷も借主となるでしょう。
フローリング(カーペット)、畳の傷や汚れ
重いものを運んでいて誤って落としてしまった傷や畳に飲み物などの液体をこぼしてできたシミなどは通常使用にあたりませんので、借主負担となります。
壁や床の水漏れが原因の腐食
壁や床の水漏れに関して、たとえばエアコンや洗濯機の排水・給水ホース不備による水漏れによるものは、借主が設置した場合は借主負担となります。
エアコンは備え付け(貸主が設置)の場合による水漏れは貸主が負担となりますので、そこの違いに注意しましょう。
タバコの臭い付きやヤニ汚れ、焦げ跡
そもそもタバコは通常使用に該当しません。
ですので、タバコの臭いが壁紙についてしまった場合の張替え費用や、タバコを誤って床に落としてしまったときにできた焦げ跡のフローリング交換費用も借主の負担となります。
ドア、網戸、障子などの傷や破損
築年数がある程度経過しているために網戸が自然に剥がれてしまうなどの経年劣化によるものは貸主負担です。
しかし、故意に穴が開いている、ドア枠が破損しているといった場合は借主の負担となります。
オーナー負担になる費用は?
では反対にオーナー(貸主)負担になるケースをお話しします。
フローリング・壁紙・畳の日焼け
フローリングや壁紙、畳などは太陽光によって日焼けしてしまうことがありますが、これは普通に住んでいても起きること。
ですので通常使用の範囲内であると判断されるため、費用は貸主負担となります。
壁に空いた画鋲の穴
基本的に壁に空いたの画鋲の穴は、壁にカレンダーや時計を掛ける場合などが当てはまる場合は通常使用の範囲内です。
しかし、太いネジでの大きすぎる穴や画鋲を何度も刺して広がってしまった穴は借主負担となりますので注意してください。
家具設置による凹みや跡残り
大型家具や少し重い家具を設置すると、そこに跡が残ってしまったり凹みができることがあります。
しかし、この場合は普通に生活していても十分起こることですので、通常の範囲内として判断されます。
前項でもお話ししましたが、落としたり故意に傷を付けた場合は貸主負担となるため、あくまで設置による跡残りや凹みだけなので気をつけましょう。
退去費用を抑える方法
ここまでは退去費用の内訳や借主と貸主のどちら負担になるのかについてお話ししました。
やはり相場よりも高い費用請求をされたくはないですし、できるだけ安くできる方がいいですよね。
では、そもそも退去費用を抑える方法は何か無いのでしょうか?
ここからは退去費用を抑える方法を3つに分けてお話ししていこうと思います。
管理会社に交渉する
わりと知られていない方法ですが、管理会社の方に直接交渉することで費用を抑えられることがあるのです。
交渉するのが苦手な人やどう言えばいいか分からない人もいるかもしれません。
というのも、「安くしてください!」と伝えるだけでは上手くいかないことが多いため、上手く立ち回ることができたら退去の立会い確認時や電話だけで費用を下げることができるのです。
交渉するときは、先程お伝えしたハウスクリーニング費用と原状回復費用の詳細な内訳を聞いた上で「この部分の金額は高過ぎるのでは?」「これにそこまで費用は掛からないはず」と明確に伝えるようにしましょう。
また、見積もりを見て分からない部分も理解できるように問い合わせてください。
これは入居時に必要ですが、入居したときの壁や床の状態を写真で撮っておくことで自分が付けていない傷の修繕費用を求められることがなく、安心です。
交渉のタイミングは退去時の管理会社との立会い確認のときや実際に請求書を受け取ったとき。
できれば立会い確認のときに退去費用のおおよその金額を聞いておくこと、そして自分から交渉するようにしましょう。
自分で修繕する
費用を抑えるために、壁に空いた小さな穴や床の傷などを自分で修復するという方法もあります。
ネットやホームセンターで売られているキットを使うことで簡単に修復できますが、床の場合は壁よりも難しいことが多いため、まずは小さめで目立ちにくい傷で試してみてください。
これは失敗してしまうとかえって傷が大きくなってしまったり、汚れとして判断されてしまう可能性がありますので、もし不安でしたら自分で内装会社に依頼して直しておく方が費用を抑えられる可能性が高いためオススメです。
目立った汚れは自分で落とす
自分で落とせそうな汚れはあらかじめ落としておくことで、退去費用を抑えることができます。
特にトイレ便器・便座内や壁やクロスの汚れ、キッチンの油汚れ、お風呂のカビや水垢などは落としておくと良いでしょう。
管理会社の方も人なので、よほど悪い会社でなければこちらの言い分も聞いてくれるはずです。
綺麗な状態で返却しようと努力したことが伝われば、退去費用の値下げ交渉をしたときの成功率が上がるはずなので、できることはぜひ行いましょう。
契約で注意したい特約
退去費用の相場観や負担の範囲に加えて、費用を抑える方法も理解できたと思います。
ではここで、賃貸を借りるときに知っておきたい「特約」について解説しますので、ぜひ覚えてくださいね。
借主が知っておきたい特約は「原状回復特約」と「敷引き特約」の2つがあります。
あらかじめ伝えておきますが、この特約の内容があまりにも不利だったり不当な契約だった場合には無効になる可能性が高いので、そのことも覚えておくと良いでしょう。
原状回復特約
原状回復特約とは、簡単に言うとある程度の原状回復費用の負担割合を借主に多く負担させるといった内容です。
つまり、床や壁の日焼けといった経年劣化によるものだったとしても、一部は借主の負担になってしまいます。
一般的には「クリーニング費用」として部屋数や広さで費用を決めている場合がおおいのですが、この特約を結ぶときは必ずどの部分をどれだけ負担するのかを具体的に明示しておかなければ無効ですので、契約時に必ず確認するようにしましょう。
敷引き特約
そもそも敷金は特に部屋の修繕が必要無い場合は全額返金されるもの。
敷引き特約が結ばれると、その敷金の中から一定の金額を差し引かれてしまうといった内容です。
よくある例だと「敷引き1ヶ月」と契約書に記載されていること。
これは退去時に敷金から家賃の1か月分を差し引かれてしまうということですので、こちらも契約時に必ず確認しておきましょう。
まとめ
今回はアパートやマンションなどの退去時に発生する退去費用について詳しくお話ししました。
残念ながら、退去費用について詳しく知らずに高額な費用を支払ってしまっている人が多くいます。
- 「原状回復費用」は故意に傷つけたりせず普通に使用しているだけであれば借主負担ではない
- 借主に責任がない場合の修繕やクリーニング費用は基本は全額貸主の負担になる
- 特約を結ぶと原状回復費用の一部や敷金の決められた金額を差し引かれる
これをしっかり覚えておけば、あなたが退去するときに不当な金額を求められても安心です。
住んでいる地域や似ている物件の相場をしっかり把握して、退去費用を適正価格で支払えるように気を付けましょう。
もちろん、正当な価格提示をしてくれる管理会社がほとんどですので、あまり疑心暗鬼にならずに対応してくださいね。
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